お題で轟


とりあえず貰ったお題でネタを搾り出します
基本的に勝負は逃げないけど、忙しいときは勘弁



その一
・AがBに害をなし、Cが助ける話。
・必須要素として
 1.舞台説明
 2.主要人物の説明 を行うこと。
・文字数は2000〜6000字
(門伝さんより)


とりあえずいくつか思いつき、三つくらいは出来てから、と思ったものの……
(特に青字のは優先順位高い)
あと、「AをBが害してCが助ける」と思い込んでいたので、慌ててアルファベット入れ替えたのは秘密

BがAにやられかけ、トドメを刺される瞬間、現れたCが――Bを思い切り殴り飛ばす
(そのおかげでトドメも避けられる)
そしてC「情けない! このような小者に何をやっておる!!」(小柄娘・辛辣・達人)

Aの行為を助けるC

Bが正義だが悪人。Aがやられる悪者。Cが部下のAを助けてBを詰る
正義であれば悪とするものを惨殺(嬲り殺)していいのか

BをAが殴り、Cが止めに入る。CはAの彼女だったのだが、今はBに心が傾いている

BをAが殴り、Cが止めに入る。Aは煮え切らないBをたきつけるために
(そして、ずっと待たされているCを見ていられず)、一芝居うったのだ

ABC
誤解。男女関係



が、一つ目でやる気を大分使い込んでしまったので、とりあえずこれだけ

Bは勇者でAの魔王にやられている
危ない所でC――Bの父で、勇者を放棄して逃げ出していた男が現れる



「つっ!」
 後ろで一つに纏めた、日没前の空を映したような紫紺の長髪が大きく揺れる。
 視界が後ろに流れ、白銀の甲冑に包まれた足が大地を噛む。
 聖剣と呼ばれた、曇った刃の剣を握る両手が軽く痺れる。
(これが……魔王)
 軽く振るった一撃が、こんなにも重い。
 衝撃に逆らわずに自分で跳んだのではあるが、受け止めるつもりでも吹き飛ばされていただろう。
 力の差に萎縮しそうになる精神に鞭をいれ、幾分の幼さを残す整った顔を引き締め、氷河を映したような蒼い瞳で相手を睨みつける。
 いわゆる所の勇者である少女はただ一人、同じく単身で現れた邪悪と闇を束ねる冷酷な支配者――魔王と呼ばれるそのモノと相対していた。
 古く初代が封じた魔王は、幾度かの復活ごとに、初代の血を引く新たな勇者によって倒されてきた。
 そして今日、十二代ぶりに蘇った彼は、先年三十七代目となった少女勇者とまみえたのである。
(なる、ほど……)
 今の一合で十メートル余りに間合いがひらいた。少女勇者は、改めて魔王の姿を凝視する。
 黒檀色の枯れ木のような手には少女の倍近い長さの杖を持ち。闇を切り取ったような深淵を思わせる色の、襤褸のようなローブに身を包み、フードに隠された表情は他者が窺うことを拒絶している。
『…………』
 かすかに笑みを浮かべたような気配がしたと思った瞬間、像を置き去るような迅さで魔王が間合いをつめてくる。
 ぎりぎりの所で繋がっていたフードがその衝撃で千切れ飛び、捩れた角と尖った耳をもつ、禍々しさを凝縮したような容貌が、儚げな晩秋の陽光に照らされる。
(まさに――本物!!)
 伝承通りの姿と力に、少女の心が激しく振動する。
 繰り出された魔王の杖を聖剣で払い、戻しの薙ぎを低くかがんでの走りで擦り抜ける。
 そのまま、少女は魔王の首を斬り飛ばさんと聖剣を閃かせるも。
 魔王の、杖持たぬ左手によってしっかと受け止められる。
(やっぱり、この剣――)
 受け止めた手の平から白煙をくゆらせながらも、不敵な笑みを向けてくる魔王へ、心の口で舌打ちをする。
 全ての邪を切り裂くはずの聖剣は、確かに魔王の纏う闇までは斬ったものの。その頑健な骨肉と、身に詰まった黒い力にあえなく阻まれた。
『どうした? 確かに見覚えがあると思ったが……。幾百年かの間に鈍ったか?』
 魔王が、自らに長く冥い(くらい)眠りをもたらした忌まわしい剣が、既に恐怖の対象にならぬことを知って、余裕と安堵を嘲笑に変えて少女に向ける。
「うるさいっ、寝起きのお前くらい、これで十分だ!」
 低い嘲りの声を強い口調で断ち切るが、それが虚勢に過ぎないことは、少女自身が感じている。
 伝承の通りに現れた魔王に対してその真価を示さない聖剣が、そして――なによりも、不甲斐ない自分がうらめしい。
(わたしが、勇者に、この剣を扱うに相応しくないと……)
 そういうことなのだろうか。
 世界はやはり、今でも、あの人を――。
(だとしても、今はわたしが勇者だ!)
「負けられない!」
 そう、未熟な少女を助けて旅をしてきた仲間達は、皆彼女を守って命を落としてしまった。
 いまさら泣き言を言っても、彼等が生き返る訳ではないのだ。
「はぁあああああっ!!」
 少女の裂帛の気声が、かつては緑と清浄な水をたたえていた荒野に轟く。
『むっ』
 少女の前進を阻むようにと左手が生んだ黒い盾状の力場は、聖剣によって壊される。
 杖を一振りして十二の闇の刺を放つが、身に刺さる前に斬り砕かれる。
(掠めるぐらいは無視。一気に――行く!)
 魔術の使えない少女にとっては、接近しなければ話にならない。
「はっ!」
 胸部中央、五つあるという心臓の一つを狙って突き出した少女の剣は、魔王の杖によってその軌道を逸らされる。
「ちっ!!」
 逸らされた軌道まま首を狙って刃を走らせる。
『よく磨いているが……まだ甘い』
 右斜め約四十度の切り上げは、またも杖に阻まれる。
『フッ――!』
 少女が剣を引くよりも早く、魔王の闇紫の唇が口笛を吹くように狭められ、一息。
 撃ち出された衝圧が、少女の胸部を激しく叩く。
「づぁうっ!」
 打ち飛ばされる少女の体から、押し出されるようなくぐもった声。
 薄い胸を覆った胸甲が不安げに軋む。
「っ……」
 内側を傷めたか、桜桃のような春を感じさせる小さな唇から、少しばかりの鮮血が吐き出される。
『ふむ。わざわざこの場所を選んだのは、我が城が壊れるのを避けようとしたからなのだが……』
 言外に、それほど用心する必要もなかったと。
 明らかな見下しと、肩透かしを受けたような不満を見せる。
『この地に並ぶ、新たなる骸となるがいい』
 魔王が滅ぼしてより五百年。未だに生きるものの無い不毛の大地に、再び死が撒かれるのだろうか。
「その新しい死は、諸悪の根源のものを。この場所の慰めとして贈るわ」
『――面白いが、少々無謀に過ぎるな』
 地面を踏み蹴り、思い切りのいい加速でもって跳び込んできた少女の剣を杖で弾く。
 無造作だが、その一撃は重く。剣こそ放さなかったものの、それ故に大きく体勢を崩してしまう。
(っ! やら、れる――)
 禍々しい笑みを少女に向けた魔王が、ゆっくりと、見せ付けるように鋭く尖った杖の先を振りかざす。
 そのまま――少女の細い首を貫くというその瞬間、後方から跳び込んできた何者かの剣によって杖が弾かれる。
『な、に……?』
 突然のことに思考が追いつかない魔王に、現れた男は懐から深海色の拳大の珠を投げつける。
 そして剣を突き出し、魔王に触れる寸前の珠を打ち砕く。
『ぬぅっ――!?』
 砕けた宝珠が、籠められていた力を解放する。魔王の足元を中心として純白の輝きが走り、光の法円を描き。
 その闇の力を打ち消して体を縛る。
「――大丈夫か」
 魔王の動きが止まったのを見た男は、倒れこんだままの少女へと駆け寄る。
 短く刈り込んだ黒髪の、無精髭をまばらに残す、左頬に刃物で出来たと思われる大きな傷跡を持つ精悍な顔立ち。
 所々を金属で補強した革鎧を身に着けた、その三十男に面識は無い。
 無いのだが、自分を心配げに見下ろしてくるその顔は、少女の記憶にある像に結びつく。
「…………父、さん?」
 若い頃、少女の母を含めた仲間達と共に描いてもらったという、一枚きりの肖像画でしか見たことが無いが、姿、何よりも雰囲気がそうだと告げている。
 未だ世界にはびこる魔物を退治して回る、勇者の三十六代目で。
 ……全て投げ出して、逃げ出した臆病者。
「悪い。風の噂でお前が旅に出たことを知って。どうしても、黙って見ていられなかった」
 まだ言葉も喋れない頃に別れて十年余。父親としての実感が湧きにくいのか後ろめたいのか、男は言葉を選ぶようにゆっくりと話す。
「……そう」
「すまない、今更顔を出すつもりは無かったんだが……」
「そうじゃない! そうじゃなくて。あ、会えるなんて、思って、無かったから……」
 短く素っ気無い返答を非難だととった男は、悲しげに目を逸らす。
 その勘違いに、少女は慌てて心の内を言葉にする。
 ……確かに、恨んだこともあった。情けない、みっともない男だと、恥ずかしく思ったこともあった。
 けれども、少女のそんな感情は、最初に仲間が死んだ時にはすっかり消し飛んだ。
 怖い。勇者というものは、自分が考えていたよりもはるかに重い。
 勇者のためには自らの命すら投げ出すその姿は――。そして、そうまでして守られなければならない自分は――。
 自分が、それだけの価値なぞない人間だと、責め苛まずにはいられない。
(それでも……)
 それでも、心だけは強くあろうと、そして肉体的にも強くなろうと、必死に踏みとどまり、頑張ってきた。
 幾度もくじけそうになった。自分よりも長い間戦い続けた彼が、それに敗れてしまったとして、果たして責められるのだろうか。
 勇者として敬われ、奉られても、けして超人などではないのだ。
 先祖が遥か昔に奇跡を起こしたというだけの、ただの人間。人類の希望などという、ご大層な位置に据えられた、象徴的存在。
 ”ひと”より強くとも、あくまで”ひと”である故に、その命を救うために仲間の命が費やされる。
「だから、恨んでない、よ。ほんとに。……今は」
「そう、か」
「母さんも、まだ待ってる」
「……そうか。本当に、色々と、迷惑をかけた」
「うん」
 短い沈黙が場を満たす――と、男の背後から火花の散るような激しい音が起こる。
 振り返り見れば、魔王を縛っている光が悲鳴を上げているらしい。
「さすがに魔王か。力のある魔物も一昼夜は完全に封じるんだが……」
 男の小さな舌打ちは、隠し切れない怯えを含んでいる。
 しかし――違う。
 元々がこちらから仕掛ければ解除される足止め専用のものであり。この少女が他の誰かが傷つけられることが分かっていて、自分だけ逃げ出せるような性格ではない以上、こうなるのは分かっていたのだ。
 その上で、今まで陰から見守ってきただけのこの男は、舞台に上がったのだ。
 自らの剣と命で、この小さな勇者を守るために。
「剣を、かして」
「?」
 逃げ出しそうになる自分の心を叱咤していると、唐突に少女が声をかけてくる。
 男はその意図を計りかねながらも、言われるままに少女に自分の剣を渡す。
「はい、代わりに、これ」
「これは――」
 少女に手渡されたのは、代々受け継がれてきた勇者の証。勇者にしか扱えないという無二の聖剣。
 少女は、彼が姿を消してからずっと、その刃は曇ったままだと告げる。
「この剣も、まだ待ってる。自分の担い手は……”勇者”は、別にいるんだって」
「……そう、か」
 体のどこかで、錆付いていたままの歯車に油を指されたような気分。
 まだ動きはしないものの、静かにその準備を始める……。
「っ!」
「来た、か」
 一際激しい炸音が響き、魔王にまとわる光が完全に消し飛ぶ。
 黒い瘴気を立ち上らせながら歩を進める魔王は、少女の前に立つ男へと不快げな声を向ける。
『まだ本調子ではないらしい。この程度の呪縛を破るのに手間取るとはな――。さて、何用かな? これからそこの勇者を刻もうと思っていたのだが、邪魔をするつもりか』
「――そうだ。悪いが、邪魔させてもらう」
 少しでも気を抜けば、際限なく震えだすだろう膝を必死に抑え込み、男は一握りの勇気を搾り出す。
「なぜかというと……。俺が――勇者だからだ」
 声の震えまでは止められなかったものの、その一言が、男の覚悟を完全に固める。
 長い間別れていた相棒の柄を、ゆっくりと、力強く、握り締める。
 あの日から光を失ったままの聖剣は、再び淡く煌めきを集め始めた――。



[設定]

伽羅は役割なので固有名詞は無い

少女:勇者の娘。生真面目系
:勇者。ヘタレ
勇者:魔王を倒せる聖剣を使える。年をとって引退するまで魔物と戦い続けなければならない
魔王:凄い力持った魔物。悪いやつ
仲間:仲間になる理由や契機は様々だが皆  勇者>(越えられない壁)>自分の命

勇者が魔物に殺られることは人々の希望云々などもあり、絶対に避けなければならない
魔物はやっぱり強いので、どうしても何人か仲間が死んじゃったりするのです
もちろん蘇生なんて無い
魔王は魔王で、自分を倒した勇者――を継ぐ者を自分の手で始末しないと、前に進めないっていうか〜
みたいな感じで勇者抹殺を最優先する。つまり、その点でも勇者は役に立っている


聖剣:魔王を倒すための武器。それ以外の魔物にも効果あり

通常
攻撃力105


魔王対戦時には剣身が光り、魔王限定で以下の性能になる
<剣自体>
攻撃力1050
当たればクリティカル
命中補正30%
魔力、魔術の消滅(切って壊せる)

<装備者>
受ける魔力、魔術を7割軽減
物理ダメージ半減
加速20%


少女は勇者として認められていないが、勇者の系譜であり現勇者の血を引くので、
光らないものの、魔王戦時には
攻撃力105
命中補正3%
魔力、魔術の消滅(切って壊せる)

受ける魔力、魔術を10%軽減
物理ダメージ5%減
加速4%

葉緒「障壁や魔王の常時纏っている闇の衣は斬れるけど、
    攻撃力が低いのでダメージはほぼ与えられない。ということですね」


また、正当な使用者ならば強く願う事で剣を光らせることも可能
(光る条件は、相手の魔物が一定以上の強さをもっていること)

攻撃力200〜500(敵の強さに比例して高くなる)
命中補正5〜10%
受ける魔力、魔術を1〜2割軽減
物理ダメージ1〜2割減



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